山の中の小さなドイツパン工房Hiroseは2016年開業以来免税事業者として営業してきました。今年10月から導入が計画されているインボイス制度は免税事業者に大きな影響があるらしいということで年始から検討を始めてきました。3月末までに決めろという話が9月末までで良いということになったのでゆっくり様子見をしようということにしました。何を決めるかというと免税事業者のままでいるか課税事業者になってしまうかです。
Hiroseは会計ソフトfreeeを使って銀行口座の入金やモバイルアプリでの入金、エアレジによる現金の入金、カード払いによる出金などを管理しています。年始からの入力作業で2022年の売上高が1000万円を超えたことが明らかになりこれにより2024年は課税事業者となり2025年3月末までに2024年の消費税を納税しなければいけません。消費税とは?1000万円とは?免税事業者とは?整理してみます。
消費税は消費者が納税するものではありません
皆さんがパンを購入する際8%(軽減税率)の消費税を払い、それをあずかった個人事業主Hiroseが納税していると思っている人が多数おられると思いますがそうではありません。入湯税やゴルフ場利用税のように利用者に課せられている税金は預かり税としてそのまま事業者が納税しますが請求書やレシートに記された消費税は商品価格の一部であり預かり税とは違います。
消費税は事業者が納税します
”道の駅”さんで皆さんが商品を購入する場合を考えてみると”道の駅”さんは1年間の税込の全売上高に消費税率をかけた値からHiroseなどから仕入れた全仕入高に消費税率をかけた値を差し引いた額を消費税として税務署に納税します。この消費税の値は売上高から仕入高を差し引いた額、つまり付加価値に税率を掛けたものと同じであり付加価値税ではないかとの見方もあったり、いやそうではないという意見もありますが、計算上は同じです。
1年間の売上高が1000万円未満の事業者は消費税の納税義務はなく免税事業者、1000万円以上の売上高の事業者は消費税の納税義務がある課税事業者です。Hiroseは開業以来免税事業者でありこれまで消費税の納税はしたことがありません。
さて、インボイス制度が始まると免税事業者Hiroseの発行した請求書は適格請求書(インボイス)ではないため”道の駅”さんがHiroseに支払った「仕入高に消費税率を掛けた額」を差し引くことができません。専門的には仕入税額控除ができないといいます。消費税を納税している課税事業者が発行する請求書がインボイスであり引き算(仕入税額控除)ができるのです。インボイスには課税事業者であることを示す登録番号が記載されているため一目でわかります。
インボイス制度が始まると
簡単にいうと免税事業者Hiroseが納めない消費税を”道の駅”さんは肩代わりしなければいけない、ということになります。さてこうなると”道の駅”さんはどうするでしょうか?
1 Hiroseに課税事業者になることを勧める
2 Hiroseが免税事業者のままであれば消費税分価格を下げてくれと要求する
3 Hiroseにしか作れない商品だから泣く泣く消費税を肩代わりする
下請法の縛りもあり一方的には決まらないものの1か2のどちらかになるとみることが妥当です。いずれにしても免税事業者にとっては大きな痛手です。売上げ1000万円以下の免税事業者も手を挙げれば課税事業者となることができ3年間は2割負担で良いという緩和措置が決まっています。Hiroseの場合約15万円の納税になります。痛いです。
しかし2023年1月、多くの免税事業者は課税事業者になる申請はしていません。このままいけば制度自体が成立するかどうか?
さてHiroseは2024年は課税事業者になることになりますがそれまでは何もせず様子見ということにしようと思います。
Comentarios