失敗は数々あります。お客さんが離れてしまった取り返しのつかない失敗もありますが、失敗から学ぶこともいくつかあります。その中から一つ
ライ麦全粒粉とスペルト小麦全粒粉で作る”ひまわりのパン”の生地を分割する際パン生地の全体量を計り個数で割り算した重量に分割します。しかし何度計っても何度計算しても量が少ない!レシピの生地量と計測値との差を見るとちょうどサワー種(発酵種)の量と一致、つまりサワー種を入れ忘れた!のでした。生地を全部ミキサーに戻しサワー種を追加しミキシングしここからはいつもの工程、つまり、分割、成形、型に入れてホイロ(発酵槽)に入れタイマーセット、という工程を順に進めていきました。時間が来てホイロを覗いた時いつもより発酵が早い!通常は時間延長するのだがこの日は生地が型から溢れ出んばかりでした。なるほどこれがオートリーズの効果なのだと実感しました。
オートリーズ法は粉と水(ぬるま湯)を混ぜて30分ほど置いておきその後パン種(発酵種やイースト)を加えて混ぜる方法です。Hiroseでは1-6A ヴァイツェンザワータイクブロート や 1-7A ヴァイツェンミッシュブロートで行っています。さて、粉と水を混ぜておくことの意味は何なんでしょう?粉に含まれるデンプンは酵素であるαアミラーゼによって多糖類のデキストリンに、さらにβアミラーゼによって二糖類の麦芽糖に分解されます。
サワー種の場合は乳酸菌によって麦芽糖がブドウ糖に分解されそれによって酵母の発酵が始まります。麦芽糖はマルターゼという酵素によってブドウ糖に分解されますから酵母だけのパン種も発酵がすぐに進みます。
つまり粉と水を混ぜて置いておくということは酵素による糖化を先に進めておきサワー種や酵母が入った時には直ちに発酵が始まる環境になっているということになります。
さらにわかりやすく言うと”先に食事の準備をしてくれており、席に着くとすぐに食べられる状態”にするのがオートリーズ法です。
当然発酵はパン種を混ぜた当初から活発になり短時間で済みます。
教科書によると粉と水を混ぜるとデンプンの分解以外にもグルテンの形成にも効果がありパン種を入れた後のミキシングに於いて短時間でしっかりした生地ができるとのことです。