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  • 執筆者の写真Shinji Hirose

サワー種_2019年2月


前回のブログで書いた通りサワー種について没頭してみました。

ライ麦100%のパンを作る際イーストを使ったらどうなるか?やってみました。機会があれば詳しく書きますが焼きあがったパンの中に空洞ができます。でも十分食べられます。しかし酸味のないライ麦100%のパンは美味しいものではありません。やはりサワー種の出番です。

サワー種の中で酵母と乳酸菌が安定して仲良く共生しています。ライ麦中のでんぷんは水が加わるとαアミラーゼの働きにより多糖類のデキストリンが、さらにβアミラーゼの働きにより麦芽糖(マルトース)が生成されます。乳酸菌は麦芽糖を食べブドウ糖(グルコース)と果糖(フルクトース)が生成されます。酵母はこのブドウ糖を食べるため乳酸菌が支配的なことが分かります。数の比は酵母を1とすると乳酸菌は100-1000だそうです。乳酸菌の働きは細かく記載するだけの知識がありませんが、大まかに言うとライ麦粉の糖分を乳酸、酢酸、二酸化炭素に分解します。酵母はアルコール発酵によりブドウ糖をエタノールと二酸化炭素に分解します。

酸性雰囲気中のサワー種には他の雑菌が繁殖しにくく粉と水を補給すればいつまでも培養し続けられます。乳酸菌により生成される乳酸はマイルドな酸味、酢酸は強い酸味です。この反応は発酵時間、生地の混合状態、温度によって変わってきます。生地が柔らかく暖かいと乳酸が多くなりマイルドになりますが同じ条件で作っても場所によって結果は変わってくるようです。

乳酸か酢酸かは明確ではないもののサワー種を作る過程で時間とともに酸度を増しPHは下がっていきます。今回ここに着目してPH値の経時変化を見てみました。


スターター(ASG)1に対してライ麦粉5、水5を混ぜ30℃75%の雰囲気中に置くと当初6.2だったPHが徐々に下がり約8時間でPH4.4で安定します。この時点のサワー種を使い粉と混ぜ生地を作り型に入れて発酵させると1時間30分で発酵完了となり焼成へ進みます。

サワー種を冷蔵庫に入れ二日後に粉と混ぜ生地を作り型に入れ発酵させると発酵完了まで2時間15分掛かりました。

PH計の測定誤差は±0.1、よってPH変化で発酵具合を把握できることが分かり条件を色々振ってみます。まず温度、ホイロ中の30℃、室温15℃前後、冷蔵庫3℃で大きく異なる結果に。


冷蔵庫中ではほぼ発酵を止めることができるようです。

スターター(ASG)とライ麦粉の割合を変えると1:10では急激にPHが変化し、1:1ではゆっくりPHが変化する。しかしPHが安定するまでの時間はほぼ同じ結果になりました。


混ぜる水分量を変えて種の固さを変えた場合柔らかい種が低めのPH値を示すがこれは”柔らかくするとマイルドになる”と教わったことと異なっています。


ライ麦サワー種でPH変化を見たが小麦サワー種でも同様に条件を振って計測したところ同じような傾向が得られた。

以上がPHの変化ですが、発酵が進んでいるか安定期に入ったかは分かるもののどの条件で乳酸、酢酸、酵母が発生しやすいかは成分分析をしないとわかりません。教科書には柔らかい生地は酵母が増えやすい環境、固めの生地で25℃くらいの低い温度では乳酸菌が、30℃くらいで柔らかめの生地では酵母も乳酸菌も増えるといった具合に複雑で、サワー種の3段仕上げ法は各段階ごとに種の柔らかさや温度などを変えている。


パン工房Hiroseではこれまで9時間一段階でサワー種を仕上げてきたが、今回の実験から仕上げ方法を変えるという必要はないと考えています。


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